「アイシャ、海に狩り行かないか?」
ショップエリアの端末を使って新しいアイテムを物色していたアイシャは顔を上げる。
ここ数日めっきり不健康そうな顔色のソルが微笑んでいた。
「シーのクエでもやろうぜ」
「……カジノのコイン、全部すっちゃったの?」
「なんのことかわからんな」
相方のチクチクとした視線を背中に受けながら、
ソルはフラフラとクエストカウンターへと歩いていった。
キャンプシップに入ると、二人は取り敢えず着替えをする。
「――お?」
紅白のフリフリ水着に着替えたアイシャを見て、ソルは目を丸くする。
「こないだのイカガワシイ半乳コスはどうしたんだ?」
「あ、あれは、もう飽きたの!」
「ふうん?」
女とは飽きっぽいイキモノだな、と、さして気にも留めずソルは青い海岸へと飛び出していった。
「今回はすーぱーはーどをチョイスした。お互い本職クラスでサクサククリアしよう。ドロップで金を稼ぐんだ」
「やっぱりソル、カジノで……」
「なんのことかわからん……なっ!」
剣を振るいながら、ソルはナイスドロップを天に祈っていた。
はぁはぁ。
どれくらいのエネミーを倒しただろうか。
炎天下での大立回りに二人の息は既にあがっていた。
「ちょっと休憩しようか」
ソルは砂浜に剣を突き立てると、波間へと入っていく。
満ち引きする波が心地よく体の火照りを冷ましてくれた。
どんどんと深みへ進んで行くソル。
その背中をアイシャが引き留めた。
「そる、そる」
「なんだ、アイシャ?」
相方は丸い長杖を持ったまま砂浜に立ち尽くしている。
そしてもじもじと口を開いた。
「そる、泳げるの?」
「は?」
思わず変な声を上げてしまうソル。
「そりゃ、モチロン」
「そ、そっか…」
気まずそうに返事をすると、アイシャは波打ち際スレスレの砂浜に座り込んでしまう。
その行動が理解できず、ソルは小首を傾げた。
「なにしてるんだ、アイシャ?此方へ来いよ、気持ちいいぞ」
アイシャは膝を抱えたまま、ふるふると頭をふる。
「アイシャ?」
「わたし……なの」
波の音にかきけされ、相手の言葉がうまく聞こえない。
「どうしたんだ?海に入れないって、女の事情のやつか…ぶふっ!」
額のど真ん中にバブガンを一発くらい、ソルはその場でよろけた。
「こ、こらアイシャ!人を狙うな!」
「ソルが変なこというからでしょ、ばかー!」
「一体なんなんだよ!」
「あいしゃ泳げないっていってるの!」
相方は半べそで叫ぶ。
「え」
この相方とは何度もウォパルに来ているが、泳げないとは初耳だった。
が。
よくよく思い出してみると、下乳出して浜辺で遊んでいる所は何度も見たが、波間で水と戯れている姿は見た覚えがない。
「アイシャ…、お前カナヅチだったのか……ぶべっ!」
「カナヅチいうなー!」
さらに一発泡鉄砲をくらい、ソルは撃沈した。
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